道案内 レッテル貼りと勇気、表現の困難と価値について
※このページに出ている名前は、私の名前以外すべて仮名です。
本日は、佐藤さんの道案内をさせて頂きました。
おっさんレンタルには、「クイックおっさん」というサービスがある。誰でもいいから誰かおっさんを派遣してほしい、という要望に応えるサービスだ。佐藤さんはそれに申し込み、私がたまたま空いていたので、おっさんレンタルCEOの西本さんに選ばれた。
依頼の内容は、国際展示場正門駅から東京ドームシティまでの道案内、電車の乗り換えに付き合ってほしい、というものだった。
私がおっさんレンタルでやりたいことは、ベビーシッターだ。だから、今回の依頼は、私が主目的としているお仕事ではない。
でも、おっさんレンタルという、わけのわからないサービスに申し込んで来る人は、変で面白い人が多いだろうという期待があった。そういう人と話すのは楽しい。
依頼内容は道案内だけれど、道中では雑談もするだろう。それはたぶん楽しいものになるだろうという期待があった。だからお受けした。
待ち合わせ
昼12時15分に国際展示場正門駅の改札前で待ち合わせた。現れた佐藤さんは、独特な可愛さの服装をしていた。
この日の国際展示場、東京ビッグサイトでは、同人誌の販売会が行われているらしかった。同人誌の属性を持つ人の可愛い服装、という感じだ。その道として洗練されたセンスをお持ちの方だな、と感じた。
率直に言うと、佐藤さんの服装は、「この人は同人誌系の人だな」ということが、なんとなくひと目でわかる。周りから見た目で属性を判断されるというのは、嫌な気分になる部分もあるんじゃないかと思う。
佐藤さんは、そういうレッテル貼りをされる可能性を認識した上で、この服を選んでいるのだろう。佐藤さんには、自分の価値観を持ち、それを貫き通す勇気があるのだと思う。
自分の価値観も、勇気も、簡単には持てないものだ。このお姿を見ただけでも、この仕事をお受けして良かったと感じた。
ご案内
今回のルートは、
国際展示場正門駅~ゆりかもめ~新橋駅
~徒歩
~内幸町駅~都営三田線~水道橋
~徒歩~東京ドームシティ
というものだ。
国際展示場正門駅から、ゆりかもめに乗る。佐藤さんはとても気さくな方で、にこやかに色々なことを話してくれた。
中部地方にお住まいで、昨日の夜、深夜バスに乗って東京に来たそうだ。ご友人と一緒に来たのだけれど、佐藤さんは東京で別のモノも見たかったので、一時別行動で東京ドームシティへ行きたいのだ、とのことだった。
新橋駅でゆりかもめを降り、内幸町駅までを歩く。私は10年ほど前に、このあたりの会社で働いていた。風景を懐かしく感じる。
内幸町駅のホームへ着く。佐藤さんは、東京ドームシティでショーを観た後、また内幸町駅まで戻って、ご友人と落ち合うそうだ。
佐藤さんは、東京の路線図は複雑過ぎて解読不能だ、という意味のことを仰っていた。それは私も同感だ。私は通算で15年ほど東京の会社に勤めていたけれども、全ての路線を覚えているかというと、全くそんなことはない。自分が日常的に使う路線を知っているのみだ。
とりあえず、都営三田線は西高島平駅が北方向で、目黒駅が南方向なので、東京ドームシティから戻られる時は目黒方面の電車に乗ってくださいね、とだけお伝えしておいた。
ホームに入ってきた電車に乗る。佐藤さんが東京ドームシティで見たいものは、戦隊ヒーローのショーだそうだ。基本的には子供向けのショーだけれど、大人のファンもたくさんいるらしい。善悪がはっきりしているところが好きなのだ、と佐藤さんは語ってくれた。
確かに、他の世界観のショーや舞台、ドラマなどでは、さまざまな方向の正義と悪、愛情と悪意などが混沌と絡み合う様子を表現することが多いように思う。戦隊ヒーローのショーは、そういう意味では貴重な世界観だ。善と悪が単純化されて表現されている。そういうものは、他にはほとんどないかもしれない。
複雑なものを表現するほうが難易度が高いように感じるから、多くの大人は、その困難さに価値を感じて、複雑なものを好むのだと思う。しかし、表現が困難であることと、その表現物の価値は、直接的には比例しないはずだ。戦隊ヒーローのショーは善悪が単純で表現しやすいから価値が低い、というふうに感じてしまうのは、もしかすると考えが浅いのかもしれない。
また、近年の戦隊ヒーローショーはアクション要素としても洗練されてきているとのことだった。私はベビーシッターを志しているということもある。私も、機会を見つけて戦隊ヒーローショーを観てみよう。
電車は水道橋駅に着き、無事、東京ドームシティへ。こちらで業務終了だ。
交通費の精算をしなければならなかったのだけれど、お釣りをきちんと用意していなかったので、最後にわちゃわちゃしてしまった。これは私のミスだ。次からは改善しなければ。
同人誌の世界についてもっとたくさんお話をお聞きしたかったけれど、ご一緒したのはごく短い時間だった。後ろ髪を引かれる思いで、東京ドームシティを後にした。
ともあれ、私にとっては大変楽しい時間だった。佐藤さん、ありがとうございました!