萩原さん パソコン選びご同行

※このページに出ている名前は、私の名前以外すべて仮名です。

本日は、萩原さんのパソコン選びご同行をさせて頂きました。

萩原さんには、5ヶ月ほど前、私がおっさんレンタルに登録してすぐの頃に「飲み相手」としてレンタル頂いていた。
その際の記事はこちら

私は「ベビーシッターのおっさん」として登録していたから、この「飲み相手」としてのお仕事は、予想外のものだった。しかしお受けしてみると、とても楽しいお仕事だった。

1月に萩原さんにレンタル頂いて以来、私はベビーシッター以外のレンタルもお受けするようになり、様々なお仕事を経験した。それらはそれぞれに楽しく、もしくは興味深いものだった。

なんでもお受けする、というわけではないけれど、より広くお仕事をお受けし、仕事を楽しむようになったのは、萩原さんにレンタル頂いた経験によるところが大きい。この人のおかげで、この5ヶ月、私はとても楽しく過ごすことができた。その意味で、この萩原さんは私の恩人だ。

パソコン選び

今回のレンタルは、「パソコン選びに同行して欲しい」という内容だった。萩原さんは会社員として働いているが、営業周りが多いそうだ。仕事でパソコンには触っているものの、頻度が少ないので、しっかりとスキルを付けたいというお気持ちがあるようだ。

私は、5月から職業訓練校の講師を始めていた。Web制作の講師だ。パソコンについて何も知らない人を対象として、Web制作の基礎をお教えしている。

パソコンについて何も知らない人が対象だから、自分のパソコンを持っていない受講生さんも多い。ちょうど一週間ほど前、そういう人たちに向けて、Web制作を勉強するための最低限のスペックのパソコンを案内したところだった。

その直後のタイミングで、この萩原さんからの依頼があった。二つ返事でお受けした。

「引き寄せの法則」という言葉がある。私の本業はプログラマーだし、理系人間だから、基本的にはそういうものを信じない。しかし今回のように、何かをしたら、その何かが役に立つ別の機会がぽつりと産まれる確率は、普通の確率よりも大きいような気はする。

パソコン選びの難しさ

パソコン選びへのアドバイスというのは、パソコンに詳しい人であっても緊張するものだ。

自分のお金で自分のパソコンを買うためにパソコンを選ぶのなら気楽だ。しかし、他人のパソコン選びをするには、その他人の価値観を理解する必要がある。どこにいくらお金をかけるのが妥当だと感じるのか、を、読み取らなければならない。

しかし、その価値観は、買う本人にもわからないだろう。パソコンの起動にかかる時間が30秒から5秒に短縮されることに、いくらの価値を感じるか。たくさんの画像を保存できることに、いくらの価値を感じるか。スマホのバックアップができることに、いくらの価値を感じるか。

パソコンでできることはたくさんあるけれど、実際にパソコンを使い始めないと、パソコンにまつわるそれぞれのことがらについて、自分自身の価値観を理解することは難しい。だから、パソコン選びは、何も知らない人にとって難しい。そして、パソコンに詳しい人が横に居ても、本人にとっての最適解を探ることは、やはり難しい。

信頼してもらうということ

どちらにしろ、まず最初になんでもいいから何かのパソコンを買って使い始めないと、何もわからない。結局のところ、多くの場合は「まず買って使ってみてくれ」ということになる。

私は職業訓練校で、受講生の方々にオススメのパソコンを紹介した。基本的には、最低限の性能を満たす範囲で安いパソコンを提示しただけだ。3万円くらいの安いノートパソコンだ。

私は、職業訓練校では、上記のような難しさを説明した上で、「買ってみなきゃ何もわからないから、とりあえず一番安い価格帯の3万円のやつを買いなよ」と受講者さんたちに伝えた。受講者さんたちは、概ね私を信頼してくれたようで、何人かの人はその基準でパソコンを買った。

結局のところ、全てを理解してパソコンを買うことは不可能だ。だから、初心者の人が初めてパソコンを買う時は、誰かの言うことを信じて買うしかない。「このひとの言うことなら、たぶん正しいだろう」と思える人を信じて買うしかないということだ。

逆に、アドバイスをする側にとっては、パソコン選びのアドバイスを求められるということは、その人から一定の信頼を得ていることの証明であるようにも思う。だから、私の勝手な解釈ではあるが、今回のご依頼は誇らしく感じた。

待ち合わせ

パソコンを買う場合、慣れた人はネット通販で買うことが多いと思う。しかし、萩原さんにとっては初めてのパソコン購入だ。だから、現物を見られた方が良いだろうと考えて、新宿のビックロに行くことにした。

待ち合わせ場所は、新宿駅東口改札だ。

新宿駅東口改札で待ち合わせ

ビックロは、ビックカメラとユニクロが作った共同店舗だ。家電量販店と衣料店ということで、その組み合わせに意味があるのか?と懐疑的な人も多かったと思う。ビックロの商売がうまく行っているのかどうか、部外者の私にはわからない。ただ少なくとも、パソコン売り場は充実していると感じる。

萩原さんと新宿駅東口改札で待ち合わせる。現れた萩原さんは、今日もカッコ良かった。

萩原さんはアパレル業界で働いたことがあるそうだ。前回お会いした時も、カッコ良い服装だった。可愛い、ではなく、カッコ良い、という形容がふさわしい。ご自身の世界観のようなものがある方だな、と、前回も感じたし、今回も同様だった。

私は、基本的には自宅に閉じこもっているプログラマーだ。服には無頓着な日常を送っている。一方で最近になって講師業を始めたので、薄い知識であまり自信のないまま、講師としての服を選んだ。

そういう私からすると、萩原さんのセンスを羨ましく感じた。何を勉強したり経験したりすれば、こんな自然でカッコいい服装をチョイスできるのだろう。

人生に於いて時間は限られているから、全てのジャンルの知見を積むことは不可能だ。萩原さんは私が持っていないものを持っているけれど、私も萩原さんが持っていないものを持っている。つまりは、ただ単に専門性が違うというだけの話だ。しかしやはり、自分に無いものを持っている人のことは、まぶしく、羨ましく見える。

ビックロへの道中にて

ビックロまで、10分ほどの道のりを歩く。歩きながら、少しの会話をした。

今回は、何のためにパソコンを買うのですか、と聞く。萩原さんは、とにかく何もわかっていないので、パソコンに慣れたいのです、という感じのことを仰った。

私は2001年からプログラマーをしているし、大学時代の実験でもパソコンは不可欠な存在で、触らない日はほとんどなかった。だから、パソコンのない生活というものは、大学入学以来、経験したことがない。

今の20代の人たちは、パソコンを触ったことのない人が多いようだ。

おそらく義務教育や高校では、パソコンに触る機会は少ないだろう。大学でも、専攻する学問によっては、パソコンが不要な場合は多いと思う。

新卒就職の頃には、既にモバイル端末が発達していた世代でもある。パソコンがなくてもスマホやiPadなどの端末があれば、仕事も十分にできる環境にある人も多いのだろう。時代が変われば道具も変わるのだ。

パソコン選び

いよいよビックロに着いた。パソコンを選ぶ。

ひとまず、予算感を聞く。萩原さんは漠然と、8万円から10万円程度の金額をイメージされていたようだ。

状況によってはそれが妥当な予算感である場合もあるけれど、私からすると高すぎる金額だと感じた。

前述の通り、自分ではない誰かのパソコン選びは難しい。私は自分のスタンスを説明した上で、もっと安いパソコンを選択することを提案するために、下記のようなことを話した。

まだパソコンに慣れていないのなら、ひとまず一番安い価格帯のパソコンを選ぶべきだと思います。なぜなら、自分が最終的にパソコンに何を求めるかを、ご自身で理解するまでには時間がかかるからです。

一番安い価格帯なら、3万円台周辺で買えます。コスパ重視で選ぶなら、 メーカーはデルかエイスースかエイサーになると思います。それらと同じスペックのものを、NECなどの国産メーカーで買うと、だいたい倍以上の金額になります。ただ、サポートはそちらのほうが厚いです。

もし出先で使いたいなら、ご自身のバッグに入るかどうかも重要です。大きいパソコンを選んだ場合、それを入れるために大きなバッグを買う必要も出てくるかもしれません。

だいたいそんなことを話して、商品棚に並んだパソコンを順番に見ていった。まず、国産の高いものを見る。そのスペックを記憶した上で、上記のコスパの良いメーカーの棚を見る。萩原さんは、「こんなに安いんですか!」と驚いてくれた。良かった。その知識をお伝えできただけでも、私がここに来た甲斐はある。

WordPress

「あの、なんでしたっけ、ワードなんとかってやつ。あれもやってみたいんです。」

ワード?Microsoft officeのWordかな?

「いや、そのワードじゃなくて…なんか別のやつなんです。」

ああ、それなら、ワードプレスじゃないですか?

「あ、それです!ワードプレス!その安いやつでも、ワードプレスはできますか?」

ワードプレスというのは、現代のWeb制作ではスタンダードなツールだ。アルファベットで書くとWordPress。私がいま職業訓練講師としてお教えしているWeb制作の内容も、ワードプレスに関する部分が大きかった。ここでも引き寄せの法則である。不思議なものだ。

ワードプレスは基本的にサーバ内で動くものなので、パソコンのスペックは低くても全く問題ない。その点についても説明し、安いパソコンを薦めた。

いくつかのパソコンを見たが、エイスースのモバイルパソコンに決まる流れになった。エイスースには最廉価価格帯にいくつかのバリエーションを持たせており、一番安い機種はグレーとホワイトの2色のみで、それよりほんの少し高い機種では、ピンクも選べるようになっていた。

萩原さんはしばらく悩んでいたが、そのピンクのパソコンを選んだ。ご自身のバッグに入ることも確認し、レジへ向かう。

レジにて

このパソコンにします、と店員さんにお伝えすると、待合席のような簡素なカウンターに通された。

萩原さんは若くて美しい女性だ。私と萩原さんが並んで座っていると、怪しいカップルなのではないかと想像する人もいるだろう。この並びは良くないな、と感じたが、うまい回避方法が思いつかない。言葉少なに座っていた。

カウンターでは、店員さんから保証などに関していくつかの勧誘をされた。それらの意味などを萩原さんに説明し、保証加入はお断りした。

その後レジに通され、パソコンを買うことができた。これでひと仕事終わりだ。前述の通り、パソコンを選ぶというのは意外と緊張を伴うお仕事だ。無事に終えることができた、という安堵を感じた。

カフェにて

萩原さんがレジでお支払いを終えたあと、萩原さんから「カフェでお茶でもどうですか」とお誘い頂いた。ありがたいお言葉だ。パソコン売り場のすぐ脇にあったカフェへ向かった。

萩原さんとお茶

おっさんレンタルのお仕事の醍醐味は、普通の生活では接触するはずのなかった人と接触し、会話ができることだ。萩原さんは若い女性で、私はおっさんである。普通だったら、肩書きなしの対等な立場で会話できる場面は、まず無いだろう。

会社員をしていれば、接触自体はあるだろう。しかし大抵の場合、中年男性は役職者で、若い女性は部下の立場だ。中年男性が若い女性に雇われている、という状況になることは、一般的にはおそらくかなり少ない。

おっさんレンタルのルール上、レンタル頂いている間の飲食代は基本的に全て依頼者様側にお支払い頂くことになっている。回避しようと思えば回避できるお支払いをして頂いてまで、私と話すことを求めて頂けたということだ。それは、私にとって大きな名誉だ。

萩原さんは、私に注文したい飲み物を聞いた。私は紅茶をお願いした。

萩原さんは、コーヒーじゃないんですね、と仰った。私は、コーヒーでカフェインを多く摂ると夜寝られなくなるんです、と説明した。私は実際、カフェインにとても弱い。単なる身体の特性に過ぎないとはいえ、弱い自分を見せるのは率直に言うと恥ずかしい。

しかし、この場で「弱い自分を見せたくない」という感覚を持ってしまう自分は、それはそれで情けない。おっさんと呼ばれる歳になっているというのに、私はまだ歳相応に成長していない。

一方で、このおっさんレンタルの枠の中に入り、萩原さんと出会わなければ、そういう自分に気付くこともなかった。この仕事をして良かったと感じた。

お別れ

カフェでの時間は、ほんの15分ほどだっただろうか。いくつかの話をしているうちに時間が経ち、お別れの時間が来た。 お代を頂き、別れた。

前回萩原さんとお会いした時も、私にとってたくさんの気づきがあった。属性がぜんぜん違う人だから、ということが大きいのだろうが、前回に続いて、萩原さんとお会いすることで、私は新しい知見を得ることができた。

今年に入ってからだと思うのだけれど、私の頭の中には「混ざることは良いことだ」というフレーズがたびたび思い浮かぶ。私は昨年末で会社員を辞めてから、会う人の属性が爆発的に広がった。考えの違う人たちと混ざり合い会話すると、たくさんのことに気付く。

今回のお仕事はパソコン選びだったから、多少の重圧感はあった。しかし、やはり楽しいものだった。相手にとって重要なことがらのために感じる重圧は、むしろ楽しい。

充実した時間でした。萩原さん、今回もありがとうございました!

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