皆川さん 時間つぶしご同行

※この文章に登場する名前は、私の名前以外は全て仮名です。

本日は、皆川さんの時間つぶしにご同行させて頂きました。

大阪から観劇のための上京

おっさんレンタルCEOの西本さんからLINEが入った。クイックおっさんでの依頼だ。関西から観劇のために上京するのだけれど、3時間ほど時間が余るので、その時間つぶしに付き合って欲しいとのご依頼だった。

40代女性とのこと。40代、と聞くと、少しホッとする。年齢が近いと、仲間だ、という感覚を持つことができる。

しかしそれは裏を返せば、年齢差がある人は仲間ではない、と、私は考えているということだ。私は自分では考え方が柔軟な人間であるつもりだったけれど、もしかしたら、自分は典型的な頭の固いおっさんになっているのではないか、と、少し恐怖した。

本当に頭の固いおっさんは、そういうことを恐怖すること自体がないはずだ。だから私は少しはマシなはずだ、と心を立て直す。自分がどんな人間かなんて、自分ではわからない。

どこかで聞いた名言で、「世界は事実ではなく認識でできている」というようなものがある。ニーチェの言葉だっただろうか。

他者にとっての私は、その他者の認識のみで構成されていて、私の中身そのものは関係がない。私の中身がどうなっていても、他者から見た私が頭の固いおっさんならば、私は頭の固いおっさんだ。

おっさんレンタルに登録してご依頼を受けるたび、こういう、これまであまり考えたことのないようなことを考える。おっさんレンタルという場は、私の脳味噌を強くシェイクし、価値観を揺さぶってくれる。それは私にとって、良い経験だ。

行き場所の相談

時間を潰すには、行き先が必要だ。いくつかの候補を挙げた。

この日の前日、私はたまたま上野公園で開催された「角打ちフェス」に参加していた。
参考:角打ちフェスツイッターアカウント

角打ちフェスでは、入り口で参加費を支払うといくつかのコインが貰える。そのコインと引き換えで、お猪口1杯のお酒を飲ませてもらうというイベントだ。

私はイベントに満足したけれど、あまり酒に強くないので、もらったコインが余っていた。コインがもったいないので、行き先候補のひとつにこのイベントを提案した。

皆川さんは、この角打ちフェスに興味を持ったようで、まずはそこへ行くことになった。

待ち合わせ

待ち合わせは、東京駅の銀の鈴にした。

私は埼玉県に住んでいて、東京駅までは電車で1時間ほどかかる。電車遅延などで遅刻しないようにと、待ち合わせ時間の1時間半ほど前に東京駅近くのカフェに着き、仕事をしながら時間を待った。

幸か不幸か仕事に集中してしまい、気がついたら午前10時50分。待ち合わせ時間は午前11時だ。まずい。ギリギリだ。遅刻しないようにと早く来たのに、これでは意味がないではないか。急いでパソコンをバッグに突っ込んでカフェを出る。

銀の鈴は改札内だ。改札から入る。東京駅には何度も来ているけど、銀の鈴に行ったことはなかった。構内図を見て場所を確認し、小走りに移動する。

銀の鈴に到着したのは10時59分。ギリギリ間に合った。皆川さんからLINE通話を頂き、落ち合った。

一応間に合ったけれど、これでは落第だ。こういうシチュエーションでは、10分前に待ち合わせ場所に着いて待っているのが筋ってもんだ。今後は本気で気をつけなければ。

上野公園へ

銀の鈴から、そのまま電車に乗り、上野公園へと向かう。

皆川さんから、今回の観劇についての話を聴く。観劇はジャニーズ系のもので、競争率が激しいそうだ。つい最近、嵐の活動休止が発表され、もともと激しいチケットの争奪戦が更に激しくなっているらしい。

皆川さんは、旦那さんとお子さんの3人家族だそうだ。お子さんが大きくなり、自分の自由な時間が持ててきているとのこと。皆川さんも、きっと育児時代は苦しまれたのだろう。大変だった時代を埋めるように、自由な時間ができた今を楽しんでいるのかな、と考えた。

上野公園に着き、角打ちフェスへ。皆川さんはお酒をちょっとは飲める、と仰った。昨日の私と同じように、あまり知らない日本酒を試してみたい、というノリのようだ。

お酒を選ぶ皆川さん

お酒を選ぶ皆川さん

角打ちフェスでは、コインと引き換えにお猪口一杯の日本酒を飲める。余っていたコインは3枚だから、3杯飲めるということだ。

皆川さんの想像よりもお猪口が大きかったらしく、え、こんなに注ぐんだ、とびっくりされていた。

角打ちフェスでは、酒だけではなく、いくつかの食べ物も出店があった。皆川さんはあん肝鍋を買い、お酒を飲みながら食事された。

皆川さんは私にも何か食べたいか、とお聞きになった。私は、今はお腹減っていないのでいいです、と答えた。

こういう時って、どう答えるのが正解なのだろうか。

お腹が減っていないのは本当だったので、そう答えるのはそれはそれで正解だと思う。けれど、片方が何かを食べていて片方は何も食べていない、というのは、もしかしたら皆川さんにとって居心地が悪かったかもしれない。しかし、余分なお金を出して頂くのは申し訳ない、という考えもあって、私は遠慮したのだった。

Kitteへ

角打ちフェスは盛況だった。座れる場所がほとんどない。コインを使い切った後、フェス会場から少し離れた場所にあった石のベンチに座った。どうということもない話をしながら次の行き先を調べた。

次をどうするか、少々悩んだ。行き先候補をいくつか挙げていたが、入場料等がかかるところが多かった。おっさんレンタルのルール上、皆川さんには私の入場料も負担して頂くことになる。それは憚られる。

色々と考え結果、Kitteへ行くことにした。Kitteは東京駅すぐ脇の商業ビルで、無料の展望スペースから6階から東京駅を見下ろすことができる。とりあえずそこに行って、そこから先はまた考えましょうか、とお伝えした。皆川さんは、そうしましょう、と言ってくれた。

Kitteは東京駅の丸の内側にある。東京駅丸の内側はレンガ造りの外観が保たれており、美しい。たくさんの人が写真を撮っていた。観光としては定番スポットのように思えた。

Kitte

Kitte

Kitteに着き、6階へ。眺望は素晴らしかった。レンガ造りの東京駅を見渡すことができる。行き来する電車の様子も見渡せる。

Kitte6階からの眺望

Kitte6階からの眺望

この日は土曜日だったが意外と空いていた。何組かの親子連れが居る程度。ゆっくりと視野に入る建物を楽しんだ。

こういう眺望を楽しむという行為は、いつ終わらせるかが難しい。人によって、どのくらい見た時点で満足するのかが大きく違う気がする。

15分ほどぼうっと同じ場所に立って風景を見た後、いつ見終わらせれば良いのかわかりませんね、とつぶやいた。なんだか変な日本語のような気がするが、私は喋るのが下手なのでこんな言葉になってしまう。

皆川さんも、そろそろ行きましょうか、と仰った。もう一度Kitteの中へ戻る。この時点で、観劇の入場時刻まであと一時間だ。

食事

あと一時間、なにをしよう。私が考えながら歩いていると、皆川さんは、食事がしたい、と仰られた。

え、だって私の分もご負担頂くことになるのですよ。良いのですか。私は少々戸惑い、その旨をお伝えすると、もちろんそれは了解していますよ、とお答えになった。

今から考えれば、食事代は依頼者様側の負担であることは明示しているのだから、その旨を皆川さんが理解しているのは当然のことであると思う。しかし、実際にこの現場に立っていた私は、そうは考えられなかった。女性からゴハンをおごってもらうというのは、申し訳無さが先に立った。

女性からゴハンをおごってもらうと申し訳無さを感じる。これは女性蔑視だなと感じた。男女同権という考え方と、ゴハンは男がおごるのが普通という考え方は、整合性が取れない。

色々な論説があるけれど、実態の世界では、理想と現実がごちゃまぜになっている。理想に突き進むのか、ごちゃまぜのままを受け入れるのか。これから、世の中を包む空気はどう動いていくのだろう。この論点を論じる人の言葉は、少なくとも私の心を動かしてはいない。

ともかく、今回は皆川さんが出してくれると言ってくれている。食事できる場所を探した。

Kitteの中の飲食店は高い金額のお店が多いと感じたので、Kitteから東京国際フォーラムへ向かう地下道の中でお店を探すことを提案した。皆川さんは了承した。

Kitteのエレベーターを降り、地下の飲食店街を歩く。照明の効いていて明るい雰囲気だ。

手頃な価格帯のお店がいくつかあった。その中に、味噌汁を推した看板のお店を見つけた。珍しく感じて、二人でその店のメニューを観察する。味噌汁専門店 美噌元というお店だった。

数分、じっくりとメニューを見た末に、皆川さんは、私これを食べたいです、と仰った。私にも異論はない。私ひとりでは絶対に来ないタイプの店なので、興味深かった。値段も、1000円を超えない金額だったので、この立地を考えると手頃に思えた。

味噌汁とゴハンをゆっくりと食べる。食事は、とびきり美味しかった。私はふだん良いものを食べていないので詳しい論評ができないが、ともかく、私にとってはとても美味しかった。これまで食べたどの味噌汁よりも美味しかった。

お別れ

食事を終えた時点で、13時45分頃。ここから観劇の会場である帝国劇場まで、徒歩10分ほどだ。

KitteからTOKIAを抜け、東京国際フォーラムの敷地を歩き、帝国劇場までお連れした。たどり着くと、ちょうど14時くらいになった。

帝国劇場の写真をとる皆川さん

帝国劇場の写真をとる皆川さん

開演は15時だそうだが、皆川さんは14時から15時までの1時間で、物販を見て回るそうだ。それも観劇の醍醐味のひとつなのだな。私は観劇の世界を全く知らない。その世界の話をもっと聴きたかった、と、少し悔やんだ。

依頼者様は、それぞれのバックグラウンドや独自の価値観を持っている。それらに触れるのはとても興味深く楽しい。しかし、レンタルの時間は大抵、2~3時間程度だ。それぞれの依頼者様の世界観に触れて、もっと聴きたい、と感じたくらいのあたりで時間が終わる。

もちろん、おっさんレンタルと依頼者の関係というのは、時間を区切っているからこそできる繋がりだ。だから、贅沢は言えない。実際私は、自分ひとりでは絶対に見なかったであろうものをたくさん見ることができている。それらの世界観をもっと知りたいのなら、私が自分で見に行くべきだ。

今回も、知らなかった世界観を見て、自分を拡張したような気持ちになった。楽しく過ごさせて頂きました。ありがとうございました!

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